熱中症予防とむし歯予防 その1
体温のような気温が珍しくなくなりつつあります。熱中症が心配な時期ですが、一方で私たち歯科医にとってはむし歯が心配な季節です。
熱中症予防には、スポーツドリンクや経口補水液、塩分補給用キャンディー・タブレットなどを、日に何度かに分けて摂取することが大切だと言われています。
一方で、むし歯を予防するためには、糖質を日に何度も摂取しないことが求められます。糖質の量がたとえわずかであっても(一口の甘い飲み物、アメ一つであっても)摂取するたびにお口は酸性に傾き、食べている間と食後20〜30分は歯が溶かされ続けます。
熱中症にかからず、むし歯にもならずに夏を過ごすためにはどうしたらいいのでしょうか。
一つのポイントは、本当に熱中症にかかるような状況かどうかを見極め、むし歯のリスクがあっても熱中症予防を優先すべきかどうかを冷静に判断することだと思います。炎天下で一日中運動する日などはまさに熱中症予防を最優先すべきでしょう。しかし、ドリンク類をダラダラ取らず運動の前後にまとめて飲み、合間の水分補給は麦茶にするなどの工夫をすれば、少しでもむし歯のリスクを下げられます。発汗に伴う塩分補給が気になるなら、あえて糖質も含まれているキャンディーやタブレットで取らなくても、昔の人のように麦茶に塩を入れるとか、梅干しを食べるなどでも事足りるのではないでしょうか。
「経口補水液や塩入り麦茶は美味しくないから嫌がるのです」というお母さんもおられます。しかし、わが息子によると、体が脱水気味の時はうまく感じるそうです。逆に、秋になって汗をかく量が減るとまずく感じ始めるそうです。漢方薬の専門家によると、体調に合っている漢方薬はおいしく感じるが、合っていないととてもまずく感じるそうなので、息子の感想も体の声として理にかなっているように私は思うのですが、いかがでしょうか。汗をかかなくなっても美味しく感じる商品は、余分に砂糖を足して美味しくしてくれているのではと心配です。塩アメやスポーツドリンクは、普通にアメやジュースとして楽しめばいいと思いますが、熱中症対策として安易に取り入れるにはリスキーだと思います。
もう一つのポイントは、経口補水液とスポーツドリンクの違いをよく理解することだと思います。これについてはまたの機会に。